ピンポン
「は〜い、どなたですかぁ?」
「俺・・・」
「珪くん!」
真っ白いドアが開き・・・笑顔のが飛び出してきた
「珪くん、待ってたよ、会いたかった〜
駅から遠かったでしょ?
迷わないでこれてよかった〜
あ!そんなところに突っ立てないで早く入って
こっちこっち
ここはお日様が入って暖かいでしょ?
そう、そこのクッションに座ってね
あ〜!!珪くん持ってるの、シュウマイ?
うわ〜〜!
お土産にシュウマイ買ってきてくれたんだ
嬉しい、私、シュウマイ大好きだもん
珪くん覚えててくれたんだね
私もお昼ご飯作ったんだよ
もうお腹空いた?
まだだったら、あ、珪くんの大好きなモカをいれるね
いいよ〜
珪くんは今日お客様なの
イイコにしてそのクッションに座ってなさい
あ、そうそう、カーテン
ごめんね、やっぱり朝日が入ってくるのが幸せなんだもん
言いつけ守らなかったから、珪くん怒った?
あのね、大家さんのおばさんに、この間大きなキャベツ3個も貰った
だから、毎日キャベツばっかり食べてるよ
それからね〜」
は・・・俺の手を引いて・・部屋に招きいれた
そして機関銃のように矢継ぎ早に話す
俺が来るから・・・きっと掃除したんだろう
きれいに片付けられた部屋
差し出されたクッションは・・・
日の光を浴びて・・・・暖かかった
テレビの横にちょこんと置かれた・・・小さな花瓶
俺には名前の分からないような・・・・
可愛らしい花が飾ってある
目を閉じて・・・部屋の「空気」を吸い込むと
それだけで・・・を感じる
俺を座らせて・・・キッチンへ立ったの背中
右へ・・・左へと動く様子
ほんの少しの間だけしか・・・離れていなかったのに
こんなにも、懐かしく愛しく思う
「・・・ここの暮らし、楽しいか?」
「うん、もちろん!」
「ん・・・それなら・・・よかった」
「でも・・・やっぱり珪くんが傍に居てくれないから、寂しいよ」
は・・・モカの入ったカップを小さなテーブルに置くと
ほんの少し・・・寂しそうに俺を見た
「珪くんは・・・?
ねえ、私がいなくて寂しい?」
「寂しくない」
「え・・・?」
「全然全然全然・・・寂しくない
もう、のことなんて忘れて、毎日楽しく暮らしてる」
「本当?」
「本当って言ったらどうする?」
「珪くんのお昼ごはん用に、キャベツを一個スライスして食べさせる!
もちろん、カイワレも1パック丸ごと食べさせる!」
「ぷっ」
「本当に・・・寂しくないの?」
「ん・・・寂しくない」
「もぉ!キャベツ刻んでやるぅぅ!」
は勢いつけて・・・本当にキャベツを刻み始めた
寂しくないわけ・・ないだろ
でも、その言葉は口にしなかった
それは・・・ほんの少しの俺の抵抗
「珪くん、キャベツ本当に一個刻むよ!」
「本当に食べられるわけ無いだろ、やめとけよ」
「それじゃ、ごめんなさい言って〜」
「ああ・・・ごめんごめん・・俺が悪かった」
「あははっ」
「ははは」
俺たちは・・・くだらない冗談を言い合って笑いあう
刻まれたキャベツは・・・・半個分位ありそうだ
それも・・まあ、幸せなんだろう、そう思う
南の窓から・・・暑いくらいの日差しが入る
俺は・・・窓を開けてベランダへ出た
そよぐ風と・・・木々のざわめき
きっと・・・朝には小鳥のさえずりが聞こえるんだろう
はばたき市から、1時間15分で・・・この自然
ん?
考えてみれば・・・俺がここから大学へ通うってのはどうだ?
・・・それも、いい案か
さ・・・、山盛りキャベツを一緒に食おう
あ、おまえの好きなシュウマイ
ひとつくらいは・・・俺にもくれよな
END